かとう家の小ばなし

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学校教育と生きる力について考えさせられる本【悩みどころと逃げどころ ちきりん×梅原大吾】

 

 めちゃめちゃおもしろかった、こちらの本。

17歳で世界のトップに立ちながら、自分の生きていく道は本当にゲームでいいのかと悩み、あがいてもがいて自らの居場所を見つけた梅原大吾氏。一方、「いい学校からいい会社」という学校エリートの道を歩みながら、乗っていた大きな船を降り、回り道して「いい人生」に辿り着いたちきりん氏。世界一プロゲーマーとカリスマ社会派ブロガー―居場所も考え方もまったく違うふたりが、生き方をめぐって語り合った白熱対談。(amazon紹介文より)

ちきりんさんの本は、これまで全て読んでますが、今回は対談本で、しかも相手はプロゲーマーの梅原さん。これまでの経験が圧倒的に違う2人が「学校教育」について語る内容はとっても興味深く、もやもや考えていたことがすっきり言語化されていく爽快感を味わえました。

 

この本で一番おもしろかったのは、2人の、特に梅原さんの思考プロセスまで追体験できたこと。

基本的に、本ってその人の考えた結果や経験が時系列に記されていて、その思考プロセスの詳細ってなかなか見えない。でも今回、対談という形をとられていることでその思考プロセスを垣間みることができました。

最初から最後まで本当におもしろかったのですが、特に心に残った点を整理したいと思います。

 

学校って行く意味ある?

いわゆる学歴エリートで、自らそのレールから降りたちきりんさんと、学校ではずっと寝ていた梅原さん。

梅原さんは学歴がない、ということで相当厳しい現実と向き合わなければならなかったそう。バイト先のレジからお金がなくなったとき、学歴のないやつが真っ先に疑われるというお話が衝撃的でした。

 

議論を重ねる中で、2人は学校が嫌いなのではなく、学校的価値観が嫌いだったのか!という結論にたどりつきます。

 

ここでいう学校的価値観とはこんな感じ。

 

■どうしたらいい人生(安定した困らない)を送れるか?ゴールと方法論をセットで指し示す教育

■なぜ?どうして?それが必要なのか(疑問をもつこと)については軽視される

■競争のモノサシが1つ(成績)

■学歴や資格で人物を評価すること

 

この中で印象的だったのは、疑問を持つ力について。

(以下ウメハラさん)実はゲームの世界でも、日本人は”疑問を持つ力”が足りないんです。ファンからの質問でもその差が歴然としてて、アメリカ人の質問のほうが圧倒的におもしろい。

アメリカ人の質問は感心するほど具体的だし、深いんです。

ところが日本人からの質問は、「僕は思うように勝てません。どうすれば勝てるようになりますか?」みたいな質問ばかり。格闘ゲーム自体は、日本のほうがレベルが高いのに。

そしてなんでそんなに何も考えてない質問しか出てこないのかと言うと、誰かに答えを与えてもらおうとする前に、自分で考える訓練をしてないからだと思うんです。

正解なんかなくてもいいんですよ。世の中の本当に大事なことには、正解なんてないんだから。でも正解がなくても、考えて考えて、なんとか自分なりの答えを出さないと勝負にならない。

 

同じく、ちきりんさんも特にWHY(なんで?)を突き詰めないところが、日本の学校の致命的な問題と指摘します。

 

一歩社会に出ると競争にさらされ、マーケットに受け入れられるものを生み出していくには、常識を疑うこと(WHY)、これもっとこうした方がいいんじゃないかな?という疑問をもつことが大切だと言われる。

でも、そもそも学校でそんな教育を受けていない(疑問をもつこと自体があまり評価されない)から、いきなり疑問をもて!って言われても難しいんですよね。

 

自分自身もなんで?という疑問をもつことを大事にしていますが、子育てについても子どもの「なぜ?」を育てることを大事にしていきたいと思いました。

 

結果とプロセス、どちらが大事なのか

プロゲーマーの梅原さん。

プロである彼にとっては、きっと結果が大事なはず!と思っていたら、彼の答えは意外でした。

勝つという結果だけを求めるのは違うというか。本当に大事なのは結果に至るプロセスなんですよ。

理由は、要領や効率の良さで勝つ事はできても、プロセスがよくないと勝ち続ける事はできないからなんだそう。

 

そして市場が評価するのもプロセス。ゲームでは勝つこと以上に、その勝ち方が鍵になる。勝てたとしても、かっこいい勝ち方でないとファンは増えない。さらにはゲーム業界自体も盛り上がらないから。

(AKBも人気投票を開示し、それに向けて頑張る姿をファンに見せることでさらにファンの心をつかんでいるのも同じこと。)

 

ここでもちきりんさんは、指摘します。

でもポイントは、リアルな世の中では「何が評価されるのか」「どうすれば評価されるのか」という基準が、明確にされていないってことなんです。だからその基準を嗅ぎ分ける能力自体が問われる。

100点を取った人が偉いとか、偏差値が高い人が偉いといった「これができれば褒められます」的な学校的価値観が刷り込まれてしまうと、何にでもわかりやすい基準があると思い込んでしまって、「どうすれば評価されますか?」って聞くような人になっちゃう。そういうコトを続けてると、マーケットが何を評価してるのか、自分で気づく能力が失われてしまうんです。

                       

大事なのは、基準に則し答えに最短距離で到達することではなく、正しく疑問を持ち、自分の頭で考えて、答えを導き出すプロセス。

そのプロセスの重要性を理解していないと、手っ取り早く結果・成果を出すための努力しかせずに、評価される基準がわからないと何もできなくなってしまう。

 

学校の成績表にはに反映されにくい思考プロセスを、見守っていくことが重要だなあと感じました。

 

あがくことが大事(辛い時は逃げたらいい!)

一番おもしろかった内容で、この本のタイトルにもなっている悩みどころと逃げどころに関するトーク。

個人的にも20代、めちゃめちゃあがきました。いろんな要因から自分の仕事にやりがいを感じられなくなり、もやもやする日々。いろんな場所に行って、いろんな人に会い、悩み、考え、あがきました。

この期間、本当に難しいと感じていたのは、ちきりんさんも挙げている逃げなのか、積極的な選択なのかの見極め。

「逃げ」と「あがく」ことについて語る2人の意見は、異なるんですが、それがまたおもしろい。

(ち)最初にひとつ選んだ場所に納得できないなら、どんどん道を変えていけばいい。違うと思ったらアレコレ違うことを試してみればいい。(中略)つまり、いろいろやってたらいい人生になる確率が高まるんじゃないかって思ってるんです。

(う)そういう考え方もあるってこと自体、新鮮ですね。僕にとって”あがく”っていうのは、”逃げる”とか”逃げまくる”とは全然違います。

(ち)”逃げる”ってことを、そんな簡単なコトだとは思ってないんです。だってきっと本人が一番つらいんですよ(中略)それがわかっててやっぱり「逃げるべき」って思うなら、それは私にとってはまさに”あがく”プロセスのひとつです。

 

逃げること自体つらいんですが、決断を下すという行為も本当にこれでいいのか不安でツライ。ましてや逃げるというネガティブにとらえられうる決断であればなおさらツライ。

その時点では、その決断がよかったのかどうか、よかったと思えるようにしようという行動もまだおこせていないから。

おそらく人によって、答えを導き出すためのあがきの量は異なり、きっとその当時の私は圧倒的にあがきが足りてなかったと思います。でもあがかないと答えは出ない。

 

(う)とことんまで頑張って、あがいてあがいてあがき尽くすと、自分の器というか、”分”みたいなもの、役割とか居場所みたいなものがわかってくるから。

(ち)その「このくらいの人間なんだ」っていう気持ちに対する納得感が高いことが、「いい人生だ」と感じられる理由になってるのね?

(ち)この畑こそが自分の天職だったんだ、って自分で自分に信じさせる能力が、いわゆる「生きる力」なんじゃないのかな。

 

でもその悩み・あがきのプロセスはここで言うちきりんさんの「生きる力」、生きていく力を身につけるのに必要な過程だったんだと今は思えます。

 

誤解のないよう最後に綴っておくと、学校教育って結局私たちがつくっているんですよね。私たちが選んだ代表の議員が法律(学校教育法)をつくり(または改正し)、その法律をもとに学習指導要領が定められ、学校はそれをもとに運営されています。

子どもたち自身が今の学校教育をよりよいものにしていくのは難しいと思うので、保護者として、家庭で、地域でできることも考えながら子育てしていきたいなと思いました。

 

長くなってしまいましたが、ここにまとめたことはほんの一部。

この本ができるまでの、2人の本音が書かれているあとがきもとってもおもしろいので、興味ある方は是非〜!

 

参考までに。

Chikirinの日記

 

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