スーパーのカートには人生が詰まっている|「ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室」を読んで
何気なくAmazonを見ていた時に偶然見つけた本。
“冷蔵庫の中身が変われば生き方が変わる――ほんの少し買い、たくさん作り、捨てないしあわせ"
米国人の著者は37歳でフランスのル・コルドン・ブルーを卒業した遅咲きの料理人。
帰国後、地元の巨大スーパーマーケットで、買い物客の女性が缶詰めや箱詰めやレトルト食品ばかり買いまくる様子を目撃して、ショックを受ける。その買い物客の「料理のことって誰も教えてくれなかったし」という言葉がずっと心に引っかかり、一念発起。料理に対して苦手意識があるせいで、自分に自信を持てずにいる女たちを10人集め、料理教室を開催する
著者と10人の女たちは、料理する技術を磨きながら、食品廃棄の問題、食品添加物の問題、畜産をめぐる環境の問題、漁獲量の問題など、現代の食を取り巻く様々な問題についても話し合い、考察を含めていく。消費者が変われば、市場も変わる!
タイトルがセンセーショナルな本はどちらかというと苦手であまり手にしないのだけれど、内容紹介を読んで俄然読みたくなってしまい、やっと読み終えた。
ストーリーは、著者が地元のスーパーで缶詰やレトルト食品ばかりをカートに詰め込む親子連れを目撃するところから始まる。著者はその後、タイミングを見つけて親子連れに話しかけ、根気よくゆっくり説得しながらレトルト食品を棚に戻してもらう代わりに、その商品がまねしている本物の食品をカートに入れてもらうのだ。
実は私もスーパーでレジに並んだ時、前の人のかごの中身が気になってしまう人の1人。失礼だけど、豊かな食材がたくさんあるまちに暮らしていても、こんなに加工食品に頼る生活をおくる人もいるのかと思ってしまうこともある。(状況も知らないのにほんとにすみません。。)
これまでも、「買ってはいけないシリーズ」などの食品に関する本は読んできた。
でも、本書はそういった注意喚起を目的とした本とは違い、10人の女性の変化を通じてより身近に感じられる内容でとてもおもしろかったんです!
そんなわけで、印象に残った点を書き残しておきたいと思います。
なんだってイチからつくれるという意識・感覚を取り戻していく
様々な事情から料理に苦手意識を持つ女性たちは、包丁の持ち方からスタートして、野菜・魚の調理方法、肉のさばき方からパン・スープづくりを学んでいく過程で、徐々に自信をつけていきます。
このレッスンの過程がとても丁寧で、勉強になるんです。
例えば肉のレッスンでは牛や鶏などの様々な部位を詳しく説明し、どんな料理に合うのか(煮込み?焼く?など)を詳しく説明していきます。鶏に至っては、まるまる1羽を解体する術を身につけていく。
企業による巧みなマーケティングにより、簡単なソースさえつくる技術がない、時間がないと思わされがちだが、料理って実は思うほど難しくないんだよということを教えてくれる。
食べるという行為にとって大切なのは、手軽さより何より栄養を与えるということ。
そのことをもう一度思い出すべきだなと思いました。
実際に味見して、自分を信じる
レッスンの中では、数種類のトマト缶 、オリーブオイル、塩、チーズを味見する。
食品表示を見て、実際に味わって、なぜおいしいのか、まずいのかを体験に落とし込んでいく過程で、何を基準に選んでいけばいいのかを学んでいく。
おいしい、まずいには必ず理由があって、まずい理由は大抵、食品添加物。
私も実体験として、つわりの時は市販のルーを使ったカレーやシチュー(化学調味料が入っている)が食べられなくなってしまい、米粉と牛乳のシチューなら食べることができた経験がある。
やっぱり、高いお金を払ってでも、味と品質のよい材料を買うことには価値がある。
そして、味覚は個人的なもの。
だから自分が好きなものを理解し、レシピはあくまでガイドライン的な存在として活用しつつ、自分のつくるもの(自分の舌)を信じることが重要なのだと思う。
さいごに
一番印象に残ったのは、料理ができることって、人をこんなにも勇気づけ、自信を持たせるものなのかということ。それくらい、レッスン参加者の多くは変わっていった。
時間がないと人は言う。
そして私たちはとかく、うまい、早い、安いを求めがちだ。
だけど、このうまい、早い、安いと「栄養が豊富」ということを全て満たすのはなかなか難しい。
唯一満たせる手段があるとしたら、それこそ自炊だろう。
時短で料理できる方法と同じくらい、忙しい私たちに必要なのは、きちんと料理をすることの方が、その後の自分自身・家族の人生にとって、とても意味のあることだと再認識することかもしれない。
そう理解した上で、何を選んで食べ、どこに妥協点を見つけるのかを状況に応じて日々選択していくことが大切だなと改めて思ったのでした!