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かとう家の小ばなし

愛媛県西予市に移住し、地域おこし協力隊として働く旦那とその家族の日常を、嫁ときどき旦那の目線で綴ります。

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【読書めも】覚悟ある編集で共感をよぶ宿「里山十帖」のものがたり|里山を創生する「デザイン的思考」

 

ずっと気になっていた本を読み終わりました。

 

従来のデータからすると、成功は100%ありえないと言われた場所で宿をはじめ、開業からわずか3か月で客室稼働率90%を達成し、今も90%前後の稼働率を保ち続けている「里山十帖(さとやまじゅうじょう)」ができるまでのストーリーです。

(ちなみに、十帖の十は、食・住・農・環境・芸術・遊・健康・集という十の物語のこと。)

 

著者は、宿のオーナーであり、雑誌「自遊人」の編集長でもある岩佐さん。

自遊人は雑誌・宿だけでなく、自分たちで米をつくり、オーガニックの食品販売も手がける会社で、新潟県の南魚沼にあります。

 

岩佐さんたちは、ここ南魚沼にある大沢山温泉で、廃業予定だった旅館を改装し、資金面での困難に直面しながらも一切妥協せずに宿をつくりあげていきます。

そのプロセスが本当に示唆に富んでいて面白かったので、読書メモとしてまとめておきたいと思います。

 

宿はライフスタイルのショールームであり、リアルなメディアである。

予算がない状況下では、多くの場合、客室やロビーにある家具等についてはリサイクル品が導入されることが多いでしょう。飲食店とかでもおそらくそうだと思います。

 

ですが、岩佐さんたちは違いました。

使い勝手のいい日本有数のクオリティの家具を配置しているんです。

雑誌で特集を組むように「座り心地抜群の椅子」や「快眠を誘うベッド」を用意し、しかもそのほとんどは購入可能(メディアですね)。

それ以外にも、「マーガレットハウエル ハウスホールドコレクション」とコラボして、家具、備品からお菓子、お茶までこだわったり、母校である武蔵野美術大学の学生とコラボして客室をデザインしてもらったり。

 

普段、旅館に泊まる時って、お風呂がいいとか、見晴らしがいい、ご飯がおいしいとかで選びがち。そもそも部屋、館内がいいから選ぶ状況ってあまりないですよね。

だからそんな宿なら泊まってみたい!と思ってしまいます。

 

宿がショールームだなんて考えたことのない私にとっては、目からウロコな考え方でした。逆にそういう視点がないからこそ、多くの旅館は同じように見えてしまうんだろうな。

 

妥協のないとりくみがオリジナリティを生む

もちろん、妥協のないとりくみは家具だけではありません。

絶景露天風呂をつくるために、お風呂を新設してその前にある杉林を伐採したり、レセプションとして使用している築150年の古民家を徹底的に断熱したり。

料理も地元でとれたものを使い、化学調味料は使わない徹底的な自然派料理。

本当にブレない。妥協しない。

 

自遊人が昔、大部数を誇っていた頃のエピソードが印象的でした。

自遊人のファンは、他の雑誌と比べて自遊人のことを”なんとなくいい”と話していたそうです。

 

つくり手が細部にまで注意を払って、計算しつくしてこそ、”なんとなく”が伝わるのです。

 

妥協せずにつくるから、そのアウトプットが”なんとなくいい”空気感としてお客様に伝わるし、オリジナリティも生まれる。

オリジナリティが生まれるからこそ、リピーターも増えるし、特徴のない価格競争にも巻き込まれずにすむんだなあ。

 

「編集」するから共感の連鎖が起こる

もう1つ印象的だったのは、ターゲットのミスマッチをシビアに避けていること。

 

旅館業界では、価格帯による差別化はあれど不特定多数へプロモーションしていることが多いようです。そして不特定多数のお客へ応えられるサービスを提供することこそ、いわゆる日本の”おもてなし”と考えられている側面があります。

 

一方で岩佐さんたちは、居心地のいい空間を提供する事が、いちばんの「もてなし」と考え、徹底的にそこに注力しています。

そして、自社サイトに宿のポリシーを細かく記載することでお互いのミスマッチを避けているそうです。

 

妥協せずに追求し、本当に来てもらいたいお客様にターゲットを絞る。だからこそ、来てもらいたいお客様に届き、来てもらった際にも共感してもらえる。

そしてそのお客様の共感が、周囲の人たちにも伝わっていく。

どんな人々が集まることで、さらなる「共感の連鎖」が生まれるのかをイメージするのです。

商品や雑誌については、ターゲットを想定してつくりこんでいく作業は一般的ですが、宿についてもそういった編集作業で、新しい展開が生まれるんだなあ。

 

本を読み終えて、一番印象に残ったのは岩佐さんの姿勢。

データを読むだけではなく、とにかく自分で体験してみること。

常に、会社の社会での立ち位置を考えること。

そして「環境」という視点を持ち続けて、持続可能な活動を続けていくこと。

最後に、覚悟。

人生には勝負に出ないといけない局面が必ずあります。

「数値的な根拠はないが、話のロジックは間違っていないし、可能性があるような気がする」

これを「根拠がない」と一蹴するか、「可能性に賭ける」か。

そんな機会を逃さないようにしたいです。 

 

岩佐がおっしゃるように、きっとどの地域にも潜在的な可能性は十分にあると考えています。もちろん、私たちが暮らしているまちにも。

 

後は自分たちがどうするか?じっくり考えながら活動していきたいと思います!

 

先日読んだ、隠居系男子|鳥井さんの記事にも同じような事が書かれていたのでおすすめです〜。

いま日本の地域に必要なのは、手札の提示じゃなくて、“手札の切り方”の提示です。 | 隠居系男子

 

最後にコチラの本もおすすめ。

日本人の考える”おもてなし”がいかにひとりよがりかが書かれていて、目からウロコが落ちます。

 

ではでは〜!