めいっぱい生きる。|佐久間裕美子さん著:ピンヒールははかない
最近はエッセイのようなものをめっきり読まなくなっていたのですが、この本はとてもおもしろく読みました。
本書はヒップな生活革命の著者でもある、佐久間裕美子さんによる女性をテーマにしたエッセイです。
こたえが書いてあるようなエッセイは苦手ですが、悩む過程がていねいに書いてあり、こんな感じもいいよねと肩の力が抜けた文章は好みで、この本も染み入る言葉が各所にちりばめられていました。
「幸せ」は継続的な状態をさす言葉ではない
一番印象に残ったのは、「母になった不良少女」の章に出てくるラケルさんの言葉だ。
joy(喜び・幸福)とは、それを体験することを自分で選択した結果の瞬間的な存在で、恒常的な状況を表す言葉ではない。継続的な幸福なんてものは存在しない
佐久間さんも話しているように、女性として生きていく過程で、私たちは結婚する、しない、子どもを持つ、持たない、仕事を続ける、辞めるといった選択肢の中から、自分の道を選んでいかなくてはなりません。
この道を選んだら幸せになれる!という近道はなく、幸せになれるかどうかは選んだ後の努力次第で、自分自身で正解に近づいていかなければならない。
だとしても、幸せが瞬間的であるように、悩み、不安、不幸も永遠に続くわけではないんだよ、と教えてもらい気持ちが軽くなりました。
呪いをときながら生きる
この本を読了後に思い出したのは、少し前に話題になった「逃げ恥」で主人公みくりのおばであるゆりちゃんが話していた言葉。
若さを武器に、40代のゆりちゃんを攻撃してきた20代女子にこう語ります。
「自分の若さに価値を見いだしているのね。
私がむなしさを感じることがあるとすれば、あなたと同じように感じている女性が、この国にはたくさんいるということ。
今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ。(中略)
私たちの周りにはね、たくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもその一つ。
自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい。」
引用:「逃げるは恥だが役に立つ」最終回より
人生はどう生きようと自由だけど、 周りには、自分でかけた呪いや誰かにかけられた呪いが確かに存在する。そんなこうあるべき的な呪いは、いつしか勝ち組とか負け組という概念を生み出し、望む望まないは関係なく、勝手にカテゴライズされるようになってしまいました。
他人からの承認を求めて生きていくには、人生は短すぎる。
そう言い切ってくれるこの本からは、決して、はじめから強い人がいるわけではなく、強くなるための術を身につけてきたこと、そしてその術を使いながら、増やしながらこれからも泣いたり笑ったりしながら生きていくこと、それも楽しいよねというポジティブな姿勢が伝わってくる。
とても勇気がもらえる1冊でした!おすすめです!
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