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当たり前や常識は人がつくったもの|「社会心理学講義」を読んで

「意志って本当にあるの?」

そう聞かれると驚く人も多いと思います。

だって私たちは、意志が自分たちの行動を決め、社会を変えていくと信じているから。少なくとも私はそう思っていました。

一方、著者は「意志」は社会のしくみの中で生まれてきたものだと説いています。 

 
「意志」の正体って何?

どういうことか、ベンジャミンさんが行った実験を元に説明します。

彼は下記の3つを調べました。

  1. 運動の指令が脳に発生する瞬間
  2. 手首が動く瞬間
  3. 意志が生まれる瞬間

 

私たちの常識では、下記の順番で考えるでしょう。

  1. 手首を挙げようという意志が起こる
  2. 手首を動かすための脳内信号が関係器官に送られる
  3. 実際に手首が動く

 

ところが実験では、不思議な結果になります。

  1. 手首の運動を起こす指令が脳波に生じる
  2. 手首を動かそうという意志が生じる
  3. 実際に手首が動く

 

つまり、意志が生じる前に、すでに行為の指令が脳から出ているということなんです。

意志が行為の出発点ではない。

 

寒い布団の中から出たくない、でも出ないと・・・と考えている場合も、「えいやっ!」という意志をもって、布団から出るんじゃない。

「布団から出よう」という意志をもつ(意識する)前に、布団から出るために体を動かせ!という指令が出ていることになります。

行為が実際に遂行されるほんの少し前に行為決定の意志が意識されるので、意志が行為に先立つという感覚のごまかしに我々は気づきません。(※太字は個人的なもの)

 

じゃあ、意志って何なの?ってなりますよね。

意志とは、ある身体運動を出来事ではなく、行為だとする判断そのものです。人間存在のあり方を理解する形式が意志と呼ばれるのです。人間は自由な存在だという社会規範がそこに表記されている。意志や主体はモノではなく、コトすなわち社会現象として理解しなければなりません。

(※太字は個人的なもの)

 

ちょっと難しいですね。。

分かりやすくいうと、私たちは社会を運営していく上で、ある行為に対する責任者を見つけなければなりません。そこに「自由」や「意志」の根っこがある。

 

つまり人が責任を引き受けるという理解のもとで社会が成り立っているので、そこに「意志」の存在が必要とされるのです。(事件や裁判を思い浮かべてみると分かりやすいかもしれません。)

もし、私たちが責任を追求しなくなれば、「自由」や「意志」は不可解な概念になるかもしれない、と中島義道(哲学者)は指摘し、著者は、意志は虚構であると説いています。

 

私たちは人間がつくった社会に生きている

ちょっと小難しくなってしまいましたが、私たちは人間がつくった社会に生きているという気づきが、本を読み終えての大きな学びでした。 

社会を成立させるために、「意志」が存在する。

そして人間がつくった社会だからこそ、「正解」や「こたえ」は無い。

だから考え続けなければならない、そんなことを教えてくれる本です。

 

その他にも、

「多様性を認めることと、犯罪が起こることは同列で、システムの中に組み込まれている」

「異質性よりも同質性の方が差別の原因になりやすい」

など、人間と人間がつくった社会に対する深い考察が繰り広げられています。

 

書き上げるまでに10年以上要された大作を全部理解できたとは言えないけれど、思考のタネをたくさんもらえました。

下記の本も読んでみたいと思います!