最近読んでおもしろかった本|蜜蜂と遠雷、バブルとか。
ばあちゃんのレシピ
世界各国、ばあちゃんの台所を訪ね歩き、その料理・台所の背景にあるばあちゃんたちの生き方に焦点があてられた本。
かぼちゃののジャムをつくる時には、絶対に右回しで!
B-29が落としていった爆発しなかった爆弾の胴体を分解した後、フライパンにして炒めものをして「いい気味」って言いながら食べたのよ。
など、ばあちゃんたちの口から語られる物語は、どれも現代の枠にはおさまりきらないスケール。
いちばん心に残ったのは、世界にはいろんな場所があり、いろんな時代があり、何よりいろんな形の幸せがあるということ。
写真も満載でおすすめです!
バブル
小~中学生くらいの時にバブルがはじけたわけですが、そもそも「バブル」とか「はじける」とかの意味をちゃんと理解することなく、大人になりました。まさに、渦中にいましたし。
なぜバブルという状態が起きたのか、その後「失われた20年」、「就職氷河期」とネーミングされた時代に突入する中で、どんなことが起きていたのかちゃんと知りたかったし、いろんな人がおすすめしていたので手に取りました。
バブルの検証なくして日本の再生はない(出口治明) | レビュー | Book Bang -ブックバン-
バブル期・それ以前のバブルへ至る流れが、まさに70年以上前の戦争に突入していく過程と酷似していることがとても印象的でした。ある1方向に振れて、国全体としてそちらの方向へ向かってしまうという現象。歴史って繰り返すんだと。
そして、今の改憲や共謀罪などの議論を見ていると、また同じような流れの中にいる予感がしてしまいます。できることからやっていかないとな・・・・。
トランプがはじめた21世紀の南北戦争
トランプ大統領が就任して約4ヶ月が経とうとしています。
イスラム教徒が多い国などからの入国禁止令や、最近のFBI長官の解雇など、その政治手腕に目が離せない状況がつづいていますが、その一方で、なぜトランプ氏が勝利したのか、それが今のアメリカのどんな状況を表しているのかが全くわからない!
というわけで、以前から気になっていた上記の本を読んでみました。
著者の渡辺さんは、ボストンに長く暮らし、民主党、共和党、両陣営の集会に参加し、様々な人の生の声を拾われています。
(ちなみに、渡辺さんのcakesでの記事もおもしろいです。女がとうの昔に悩んだキャリアを、男は20年後に考える|母が語る、あたらしい働き方ーー渡辺由佳里×篠田真貴子対談|渡辺由佳里/篠田真貴子|cakes(ケイクス))
そんなていねいな取材から浮かびあがってくる、極めてリアルなアメリカの実態は、「自由、多様性、平等・・・」など、これまでアメリカに抱いていたイメージとは全く違っていました。
世界は分断されていて、民主主義が試される時代がやってきた・・・というのが正直な感想です。
トランプの支持者は主に白人の労働者階級。一方、ヒラリー氏の支持者は移民・LGBTなど多くのマイノリティーととばれる人々を含んでいます。
今回の選挙は白人の労働者階級の不満が爆発したかたちで、トランプの支持者の多くは、大手のメディアを信じずSNSなどでつながっている、自分に近しい人の都合の良い情報しか信じず、他の候補の支持者を威嚇する動きもあったそう。
この大統領選挙でもっとも嘆かわしいのは、「差別、暴言、暴力」が入ったパンドラの箱を、正義の名のもとに開けてしまったことだ。
彼が集めたエネルギーは「怒り」。時代ごとに求められているリーダーは異なるわけですが、彼はインターネット時代の群集心理を最大限に活用したと渡辺さんは分析します。
1つ救いなのは、29歳以下の若者の過半数がヒラリー支持で、若い世代のアメリカ人にとって「多様性」があたりまえになりつつあるということ。
日本でも同様の流れがあるように感じるのですが、私たちを含む世代がマジョリティーになるまでは、まだまだ時間がかかる中で、自分たちにできることは何かなと考えさせられました。
蜜蜂と遠雷
直木賞と本屋大賞をW受賞したことでも話題になっていた本で、約3年ぶりに小説を読みました・・・(約500ページ)。
ピアノコンクールを舞台に繰り広げられる、若きコンテスタントたちの物語です。
人が成長するということ。
今あるもの、そして脈々と受け継がれてきたものを、自分のオリジナリティーで解釈して表現していくことの楽しみなど、いろんな発見があっておもしろかった。
音楽って聞くものではなくて、生活の中にあるものなんだなー。
世界はこんなにも音楽に満ちているー。
狭いところに閉じ込められた音楽を外に連れ出す。
など、小説ってやっぱりいいなあという表現がちりばめられていて、とても読み応えのある1冊でした。